作品概要
バットマンノエル(2011年発行)はバットマン版クリスマス・キャロルの作品である。
クリスマス・キャロルとは日本で馴染みが薄い為、簡単に説明するとチャールズ・ディケンズの小説である。商売を営む強欲で守銭奴な老人スクルージが亡霊に出会い、三人の聖霊が現れるから生き方を改めなさい、と忠告する。
一人目の聖霊はスクルージに過去を見せ理想や情熱に燃えていたことを示す。
二人目の聖霊は現在を見せ、病気や貧困に苦しむ人々を見せる。
三人目の聖霊は一言も喋らず死体を見せる。
スクルージはその死体が誰なのか見なくてもわかっている。
自分は未来に悲惨な最期を迎える、という暗示である。スクルージはこれまでの生き方を改め人に優しくしていこう、という話である。
ストーリーは至ってシンプルだが、リー・ベルメホの美麗なイラストが画集のようで眺めてるだけでも満足できる作品だ。
特に前作「ジョーカー」でも、そうだったのだが服のシワの表現が素晴らしい。
作者であるリー・ベルメホは「バットマンはもっと人間らしさがあったほうがいい」とインタビューで語っている。
この作品のバットマンは風邪を引いていることが興味深い。
そしてブルースの孤独やバットマンの傲慢さがよく描かれている。
是非手に取って読んでいただきたい。
あらすじ(ネタバレ有り)
クリスマスイブの夜、不幸で不運続きのボブはバットマンに追われる。ボブは無職で病気の息子がいて、金になる運び屋の手伝いをしていた。
バットマンに捕まったボブは発信機をつけられる。バットマンはボブを囮にして雇い主(ジョーカー)を捕まえようとする。
バットケイブに帰ったバットマンは咳が止まらない。アルフレッドに心配されるがバットマンはジョーカーを捕まえることにしか興味がない。ボブには幼い子供がいて危険に晒される事を懸念したアルフレッドはブルースに忠告するが、多少のリスクは覚悟していると、聞き耳を持たない。
そんな中、ブルースの元に死んだロビンの幽霊が現れた。幽霊は警告する。
「今夜自分以外にも三人の訪問者がやってくる」と。
第一の訪問者
事件が発生しバットマンが現場に向かうとキャットウーマンがいた。キャットウーマンはバットマンと遊びたかったのだがバットマンの頭の中はジョーカーを追うことしかない。昔のあなたは違ったわ、とバットマンに攻撃を仕掛ける。バットマンとキャットウーマンの追いかけっこが始まる。
その過程で思い出す。若い頃は成功と勝利、貪欲に人生を追い求め最高の男になろうとしていたことを。
追いかけっこの最中、バットマンはビルから落下してしまう。キャットウーマンはバットマンに過去を見せ去っていく。
第二の訪問者
ビルから落下したバットマンは身体を引きずるようにして立ち上がらうとする。
「手をかそうか?」そこに現れたのがスーパーマンだった。
「酷い咳だ、肺炎じゃないのか?」と心配をするスーパーマンに「肺炎がどんなものか知らないくせに知ったふうな口を利くな」と言い返すバットマン。
スーパーマンに連れられ空からゴッサムの街を眺めるバットマン。
ボブの家を監視し、ジョーカーがまだ訪れてない事を知る。親や子供をおとりに使うのは狩人として失格だと、言い放つスーパーマンに正義には代償がともなう、と応戦する。
スーパーマンは貧困や病気に苦しむ人々にも幸せがあり日々懸命に生きてる事をバットマンに教える。バットマンは自分こそがこの街の大黒柱だと思い込み、彼の言う事を信じない。
スーパーマンは現在の人々の姿をバットマンに見せ去って行った。
第三の訪問者
車に戻ったバットマンはエンジンをかけようとすると車が爆発し気を失ってしまう。
気絶したバットマンを引きずるジョーカー。
ジョーカーは墓場までバットマンを運び、生き埋めにする。
そこでバットマンは未来を見る。
荒廃したゴッサムで犯罪が絶えず、誰もバットマンを思い出さない。自分は高級車だと信じて疑わなかったバットマンは周りからポンコツ車扱いで役立たずだった。
ブルースウェインの財産はオークションに出され、誰一人彼の死を悲しむ者はいない。
バットマンが誰も気にかけないから、人々もバットマンを気にかけない。
そんな絶望の未来から這い上がるバットマン。
幸せな結末
ボブの家に侵入したジョーカーは子供の目の前でボブを殺そうとする。窓から侵入したバットマンはそれを止める。揉み合いの最中、拳銃を手にしたボブはジョーカーを殺そうとする。
「やめろ!子供にヒーローの姿を見せてやるんだ」とボブを諭す。ボブは撃たず、ジョーカーは逮捕される。
バットマンはこれまでの自分の生き方を改め早速行動に移す。
ボブの家にクリスマスツリーを届け、割れた窓を修復し、ボブに仕事を与えた。それは安定した仕事で、昇給や手当、企業年金も含まれていた。
バットマンは心に自由を感じ、ケイブでゆっくり眠る。ウェイン社の制服を着たボブは息子を抱きしめる。
終

レビュー
バットマンの作品をいくつも読んでいればわかると思うが、バットマンは孤独で傲慢である。
そこが、顕著に現れているのがこの作品だろう。
ボブのことを「雑魚」「犯罪者」と呼び、子供も10年後には犯罪者になると決めつけている。
スーパーマンがブルースを心底心配しているのに、上から目線などと反論する。
傲慢なバッツが聖霊達の力によって変わっていく姿が印象的である。
特にバットマンが風邪を引くというのは、口だけ覆っていないから仕方ない、という解釈もできる。
是非、ご一読あれ。



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