バットマンとジョーカーの関係性#2

BATMANについて色々

あまりにも複雑で1記事で書ききれなかったため#2へ突入する。
前の記事#1では、バットマンとジョーカーの役割がコミックスと映画では表現が異なることと、コミックスでのバットマンの描写について話したが、次はジョーカーの話になる。

コミックスでのバットマンは解釈にもよるが、限りなくヴィランに近いヒーローという見方ができるということを言っていたが、ではジョーカーは逆にヒーロー寄りの存在なのかというと、全然違う。
安心して欲しいジョーカーは、ちゃんとヴィランだ。

コミックスでのジョーカー

映画とコミックでのジョーカーの役柄はどちらもちゃんとヴィランだ。では全く同じなのかというと、狂い方の質が変わってくる。

映画のジョーカーはそれぞれ多少の違いはあるが、社会や自分自身のために悪事を働く狂った犯罪者という印象が強く感じる。特にホアキン・フェニックスが演じる映画「JOKER」では、不遇な人生への絶望がトリガーとなっており運命や世の中など自分ではどうにも出来ないことへの憤りがジョーカーを形成している。
また、ジャック・ニコルソンが演じる映画『バットマン1989』のジョーカーは、クラシックかつコミカルながらもバットマンの両親を殺した敵役として正にJOKERらしいジョーカーといえるだろう。

一方、映画『ダークナイト』のヒース・レジャー演じるジョーカーは、社会秩序を破壊しようとする、最も「現代的で恐ろしい」ジョーカー像として描かれており、ただの快楽犯罪者とは一線を画す。その行動は何か思想のようなものを感じ取る事もでき、その残酷な行為よりも思考と発想そのものに恐怖を感じる。
上記2作品以上にバットマンへの執着がとても強く、バットマンの本質を理解している素振りすらあった。
この辺がコミックスと重なる部分でもあるのだが、詳しくは後述する。

このようにそれぞれの作品で多少の違いはあるものの、自分のために行動しているという点では共通しているのではないだろうか。そして、この1点が何よりコミックスとの大きな相違点になってると思われる。
では、コミックスのジョーカーは何のために行動しているのか…。

逆に正常なんじゃないのか?「ジョーカー」

コミックスでのジョーカーは、作品による差が本当に激しい。
映画のような正統派なジョーカーもいれば、急にキラキラしたイケメンジョーカーのときもあり、たまに首だけで登場することすらある。作者それぞれの狂気の解釈があるのだろう。その破天荒で支離滅裂で万華鏡のように変化するキャラクターも含めてジョーカーの性質と言えるのかもしれない。

ただし、一つだけ変わらず持ち続けているものある。
それが、バットマンへの執着である。

執着の強弱はあれど、バットマンに対して無関心なジョーカーだけは存在していないはずだ。(過去を遡ってコミックスを漁り尽くせばもしかしたらあるかもしれないが)
もちろんバットマンの最大の宿敵としての役割から生まれたキャラクターである以上、仕方のないことではあるが、その執着の質がやはり歪だ。その異常な執着について少し掘り下げてみたい。

バットマンを殺したいわけじゃない

そう、ジョーカーは別にバットマンを殺したいわけでは無いらしい。
相手に勝ちたい、倒したい、消したいなど憎しみを持った敵対関係ではなく「宿敵」という表現をされている。
まず、「宿敵」とは、

宿敵(しゅくてき)」とは、長年にわたって対立し続ける強力な敵、または運命的に敵対関係にある相手を意味します。英語では「archenemy(アーチエネミー)」や「nemesis(ネメシス)」と訳されることが多いです。
―― 宿敵の特徴
・長期的な対立関係
・一度や二度の争いではなく、長年にわたる因縁がある。
・互いの存在が相手の生き方や信念を揺さぶる。
・実力が拮抗している
・能力や知恵、影響力が互角で、簡単には勝てない。
精神的なつながりもあることが多い
・単なる敵以上に、互いに「理解してしまう」関係。恐れ・怒り・尊敬・執着など複雑な感情が交差。

ということらしい。
そして、ただの「敵」ではなく「宿」が付いていることに意味がある。
「宿」とは、

「宿(しゅく/やどす)」
古くは「宿る(やどる)」「宿す(やどす)」などの用法があり、「長い間、心の中に抱いているもの」「根深く蓄えたもの」という意味を持ちます。

ということだ。
敵であるにも関わらず、「嫌い」「憎い」など相手を拒否する言葉が一つも入らない。
むしろ相手に近づこうとしている表現にすら見える。
ジョーカーにとってバットマンとは、嫌悪の対象ではなく、親愛を持つべき相手と言えるかもしれない。
この宿敵という言葉にはそれだけの想いが詰まっていると感じている。

そして、それを証明するかのようにコミックスでの表現はよりストレートに直情的に描写されている。
ジョーカーという性質上、冗談[ジョーク]のように見えるかもしれないが、ジョーカーはバットマンに対して「仲良くしよう」「好きだ」「愛している」と度々囁くシーンが描かれている。

唯一映画『レゴバットマン』でのみジョーカーがバットマンに「I hate you」と言うシーンがある。ここでのやりとりは、実際の「憎しみ」というよりも「認めてくれよ!」的な歪んだ愛情表現に近い。
ちなみに、この映画『レゴバットマン』。ダークナイトに負けずとも劣らない傑作であり、コミックスでの関係性を一番ストレートに表現しているたまらない作品だ。

また、ダークナイトでは

「You complete me.」
――君がいてこそ、僕は完成する

と、ある意味での“愛”や“共依存”を匂わせるセリフを使っている。

このように様々な作中で見せるバットマンへの異常な執着は、その行動とは裏腹に敵意や悪意というよりも好意に近いもののように見える。ジョーカーが起こす事件や犯罪の数々はバットマンに注目してほしい認められたいなどの過激なちょっかいのようなものかもしれない。ジョーカーは大きな事件を起こす際には、1年以上の時間をかけて計画することもある。それだけ大きな事を成し遂げた自分の姿をバットマンに見せつけたいのかもしれない。

なぜそこまでバットマンに執着するのか

中年のおっさん同士だ。惹かれる理由がない。
バットマンにはキャットウーマン。ジョーカーにはハーレークイン。共に良さげな相手がいるのにもかかわらず、このおっさん達は強く惹かれ合う。

前の記事#1で述べたようにバットマンがジョーカーを必要とする理由は、自らがバットマンであり続けるために必要な存在であり、バットマンが「秩序と正義」を作るためには、ジョーカーが「混沌と無秩序」を用意するしかないのだ。いわゆる需要と供給が成立していると言える。

では、ジョーカー目線で考えたときにはどうだろう?
バットマンのように自分を定義づけるために誰かを必要としているわけでもなく、ジョーカーはそのままでジョーカーだ。そのまんまジョーカー。
着飾らず自分を何かに見せようとせず、素直に自分の思いのままに生きた結果がジョーカーである。
誰かのように黒いタイツに身を包み夜な夜な変身することもない。緑の髪の毛も白い肌も自前だ。
ただ、ありのままの姿が狂人と呼ばれるほど人とズレていただけだろう。

今、この多様性の時代においてはむしろ一つの価値観として普通の枠に入れても良いんじゃないだろうか?

そんなジョーカーにとってのバットマンとは、もしかしたら必要な存在ではないのかもしれない。
必ず要ると書いて必要だ。バットマンが居なくてもジョーカーでいられるのにも関わらず異常な執着を見せる理由。
それは、きっと感情的な理由に違いない。

そして、そこを紐解くために必要なヒントは様々な作品の中に散りばめられている。
例えば、コミックス『The Killing Joke(キリング・ジョーク)』は、ジョーカーが「正義の象徴」を一日で狂わせようとする物語だ。「バットマンとジョーカーが似た者同士」であることが鮮烈に描かれてる。

物語の中でジョーカーはこう言う

「All it takes is one bad day to reduce the sanest man alive to lunacy.」
――狂うには、たった一日最悪の日があればいい

つまり、バットマンもいつか「自分のよう狂人なる」と信じている。
また、映画『ダークナイト』でも

「You're just a freak. Like me.」
――君も僕と同じ“フリーク(異常者)”さ。

と言っている。


圧倒的に周りの人々と違っているジョーカーから見たバットマンとは。
自分と同じ狂人のくせに、そいつは馬鹿みたいなコウモリの格好をして普通の人々と同じ価値観を持っているフリをしている。そんなやつには、自分と同じ存在だと分からせてやらないといけない。
分からせてやるためにも、バットマンを死ぬほど追い込み本性を出させてやる。そう考えていても不思議ではない。

誰だってそうじゃないだろうか。周りに自分と全然違う価値観の人間しか居ないなかで、唯一自分と同じ感性を持つ人間を見つけたとき、ひとは安心するし、そのひとの近くにいたいと思うのは自然なことではないだろうか?
さらに、同じだと思って近づいたときにお前とは違うと言い張る姿を見たら…。それは、ちょっかいの一つもかけたくなるのが人間ってものじゃないのだろうか?

スタートの土台が普通のひとと大きくズレてしまったジョーカーだが、そこからの思考は思ったよりまともな様子すら感じられる。そこはバットマンとは大きく違うところだ。

だから、言いたい。
逆に正常なんじゃないのか?「ジョーカー」と。

続く。

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